不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

レインズとは?登録の仕組みや一般利用者が情報を閲覧する方法について解説

レインズとは?登録の仕組みや一般利用者が情報を閲覧する方法について解説

不動産を売却しようとするとき、よく耳にするのが「レインズ」(REINS)という言葉です。レインズとは、不動産会社が不動産物件の情報を交換するためのネットワークシステムを指します。

レインズの情報を登録・閲覧できるのは不動産会社ですが、過去の取引情報は一般の閲覧者向けのサイト「レインズ・マーケット・インフォメーション」で閲覧できます。売却活動をするうえでは、レインズに関する知識を持っておくとよいでしょう。

この記事では、日本の不動産流通に欠かせないレインズを理解するため、仕組みや不動産売却時の活用方法について解説します。

記事の目次

売却活動に役立つレインズとはどのようなシステム?

レインズ(不動産流通標準情報システム)とは

レインズ(REINS)とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称です。
国土交通省および不動産流通機構が開発した、不動産情報交換のためのコンピュータネットワークシステムを指します。

国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構」である公益社団法人や公益財団法人によって運営されており、全国に4つあります。

●公益財団法人 東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)
北海道、東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)、北関東3県(茨城・栃木・群馬)、首都圏1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)、甲信越3県(山梨・長野・新潟)を担当する

●公益社団法人 中部圏不動産流通機構(通称:中部レインズ)
富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県を担当する

●公益社団法人 近畿圏不動産流通機構(通称:近畿レインズ)
滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県を担当する

●公益社団法人 西日本不動産流通機構(通称:西日本レインズ)
鳥取県・島根県・岡山県・広島県・山口県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県を担当する

レインズでは、全国に設置されたホストコンピュータと会員不動産会社の端末機(パソコン)を結び、物件の登録検索等をすべてオンラインで処理しています。

一般的に、土地や中古の住宅を売買する際には、不動産会社(宅地建物取引業者)を通じて、物件を探したり買主を探したりします。
この業務を「媒介」(または「仲介」)と呼びますが、媒介を請け負った不動産会社はレインズシステムを通して、売り物件を登録したり、買い物件を検索したりします。

従来、物件に関する情報収集は店頭への貼紙、新聞広告、知り合いの業者との情報交換などを通じて行われていました。しかし、このやり方は迅速性に欠けるうえに、一部の人にしか紹介できませんでした。
そこで、広く迅速に取引の相手方や物件の検索を行えるよう、1990年5月からレインズが導入されました。

不動産イメージ

(写真/PIXTA)

レインズは宅建業法で登録が義務付けられている

不動産会社に土地や物件の仲介を依頼する際には、媒介契約を結びます。
媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があり、このうち、専属専任媒介契約・専任媒介契約については、宅地建物取引業法により、指定流通機構(レインズ)への登録や登録証明書の交付等が義務付けられています。

レインズに登録すれば、全国の不動産会社が不動産の情報を閲覧することができます。しかし、一般媒介契約の場合は、レインズへの登録義務はありません。レインズに登録されない不動産の情報は、狭いエリアでしか知られないことになります。

そのため、自身の所有する物件をレインズに登録してもらいたいのであれば、専属専任媒介契約か専任媒介契約を結ぶことをおすすめします。一般媒介契約を結ぶ場合でも、レインズへの登録をお願いできないか不動産会社に聞いてみるとよいでしょう。

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不動産イメージ

(写真/PIXTA)

一部の機能を除いてレインズに登録・閲覧できるのは不動産事業者だけ

レインズは宅地建物取引業法でいう、唯一の指定流通機構です。
レインズを利用する際の具体的な流れとしては、不動産を売却したい人が、不動産会社と媒介契約を結び売却を依頼すると、不動産会社はその物件情報をレインズに登録します。

他方、物件の購入希望をもつ人の依頼を受けた不動産会社は、その条件などをもとに、レインズ上で売り物件を検索します。
そして、物件の条件等が合うと、レインズシステム上で「売り」と「買い」のマッチングが行われ、取引が進みます。

レインズへの登録と検索は、指定流通機構に登録された不動産会社しかできません。つまり、不動産のプロフェッショナルだけが扱うことのできるネットワークが、レインズです。

レインズの登録状況を確認できる「取引状況管理機能」とは

以前は、レインズで管理状況を閲覧できるのは不動産会社のみだったため、売主は自分の物件がどのような状況にあるのか、知ることができませんでした。そのため、実際には登録をしていないのに不動産会社が登録したふりをしたり、他社から申し込みがあっても売主の確認を取らずに断ったりすることができてしまいます。

それを防ぐために、2016年1月より導入されたのが「取引状況管理機能」です。売主がログインをすると、取引状況管理機能により、自分が売りに出している不動産のステータス(取引状況)を確認できます。

ステータスは以下の3つです。
  • 公開中:不動産会社からの申し込みを受け付けている段階
  • 書面による購入申込みあり:不動産会社から書面による購入申し込みを受けた状態
  • 売主都合で一時紹介停止中:売主の事情などにより、一時的に物件の紹介ができない状態

また、公開中の物件は、原則として不動産会社からの申し込みを拒否できないという強制力も加わりました。そのため、不動産会社が不正な手段で売主の不動産を囲い込む、といったこともできなくなっています。

一般の人も利用できるレインズ・マーケット・インフォメーション

レインズ・マーケット・インフォメーションとは、指定流通機構が保有する不動産の成約価格などの取引情報を、広く一般の消費者向けに公開しているサイトです。
レインズが保有する成約情報などを、個人情報が明らかにならないかたちに加工して公開することで、消費者が安心して不動産取引を行えるようにという観点から運用されています。

例えば、レインズ・マーケット・インフォメーションにて「東京都心5区」の条件でマンションの売買情報を検索すると、以下のように表示されます。

レインズ・マーケット・インフォメーション

売買情報として記載されている項目は以下のとおりです。
  • 沿線
  • 最寄り駅
  • 駅からの距離
  • 所在
  • 価格
  • 専有面積
  • 間取り
  • 改装
  • 築年
  • 構造
  • 成約時期
  • 用途地域

このように、自分が売買しようとしている土地や不動産に近い売買履歴を見ることで、大まかな相場の把握が可能です。

レインズ・マーケットインフォメーションシステム

不動産取引にレインズを利用するメリット

■売主のメリット

売主にとって、物件をレインズに登録することで得られるメリットは、不動産の売り物件の基本的情報を、広域に迅速に拡散できる点です。
個別の不動産会社の通常の広告活動では、告知できる地域が限られます。しかし、レインズに登録すれば全国の不動産会社が情報を閲覧できるため、売却機会を逃すことがありません。

掲載される不動産物件の膨大な情報量もメリットです。
売り物件リストや過去の取引事例などは、市場動向を把握するためにも貴重な資料となります。
売却しようとしている物件の類似物件を検索し、価格動向を知ることは、適正な価格設定の資料となるほか、実際の取引交渉にも役立てられるでしょう。

■買主のメリット

物件がレインズに掲載されると、全国の不動産会社がその物件情報を閲覧することができるため、多くの人に不動産情報を届けることができます。
転勤や転職に際して地元では入手しにくい情報も、レインズ掲載物件であれば、容易に入手可能となります。

不動産イメージ

(写真/PIXTA)

レインズを利用した売却活動と媒介契約の種類

媒介契約の種類で登録義務が異なる

一般的に不動産を売却する場合、不動産会社に「媒介」(または「仲介」)を依頼することになります。不動産会社はこの媒介業務にあたり、依頼者の保護、取引の安全および流通の円滑化を図るため、媒介契約の中身を書面化することが義務付けられています。

媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。不動産会社は、媒介契約を締結する際に契約種類の相違点を依頼者(売主)に十分に説明し、依頼者の意思を十分確認したうえで、媒介契約を締結し媒介契約書面を交付します。

専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結した物件については、不動産会社は指定流通機構(レインズ)に登録し、広く積極的に買主を探し出すことが義務付けられています。

媒介業務を行う多くの不動産会社の営業担当者は、専任媒介契約(専属専任を含む)の契約を望んでいます。この2つの契約は一社としか結べないため、他社の仲介によって売却が成立して仲介手数料を得られなくなるリスクがないためです。そのため、担当者の販売意欲も高まり、多くの広告費が投入されます。また、レインズ掲載によって広く不動産会社へも周知されます。

これは、もちろん売主にとってもメリットで、早期の販売が見込まれることにつながります。また、業務報告によって反響の具合も報告されるため、安心です。

では、一般媒介契約はどのような売物件のときに選ぶべきでしょうか。

不動産の購入意欲をもった多くの買主が望むような、言葉を換えれば人気物件になりそうな物件の場合は、一般媒介契約を選ぶとよいでしょう。人気物件になりそうな物件は、多くの不動産会社が売主側の仲介としてビジネスが成立するため、競って販売活動を展開します。各社の見込み顧客に紹介される機会も増え、販売機会も多くなります。

媒介契約3種類の契約形態

専属専任媒介契約

売主である依頼者がほかの不動産会社に重ねて媒介を依頼することができない契約です。
依頼者が自ら見つけた相手方との売買契約することもできません。
指定流通機構(レインズ)には、媒介契約締結の翌日から5日以内に登録する義務があります。

専任媒介契約

売主である依頼者がほかの不動産会社に重ねて媒介を依頼することができない契約です。
ただし、依頼者が自ら見つけた相手方との売買契約することははできます。
指定流通機構(レインズ)には、媒介契約締結の翌日から7日以内に登録する義務があります。

一般媒介契約

売主である依頼者がほかの不動産会社に重ねて媒介を依頼することができる契約です。
また、依頼者が自ら見つけた相手方と売買契約を結ぶすることもできます。
指定流通機構(レインズ)への登録は任意で行えます。

  一般媒介解約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
複数の会社との契約 × ×
自分で買主を見つけること ×
レインズへの登録義務 任意 契約日翌日から7日以内 契約日翌日から5日以内
売主への業務報告義務 任意 2週間に1回以上 1週間に1回以上

レインズの登録証明書を確認しよう

不動産会社に所有する不動産の売却を依頼し、媒介契約を締結すると、不動産会社はその情報を指定流通機構(レインズ)に登録します。
レインズに登録されると、「登録証明書」が発行されます。不動産会社はレインズに登録された証しとして、その証明書を売却の依頼者に交付しなければなりません。
証明書には「登録」以外に、「変更」「再登録」「成約登録」「削除」の5種類があります。
売却物件がレインズに登録され広く告知されているかどうかは、「登録証明書」によって確認しましょう。

片手仲介と両手仲介の違い

仲介業務を行う不動産会社は、仲介手数料が営業収入です。
仲介手数料は、宅地建物取引業法でその上限額が決められており、物件価格が400万円以上の場合、物件価格×3%+6万円(税別)となります。
宅地建物取引業法では、その仲介手数料の上限額を、売主側と買主側それぞれから受け取ることができます。

不動産会社が売却の依頼を受け、買主をレインズ上で見つけた場合、不動産会社は売主からしか、仲介手数料を受け取ることができません。買主側の仲介手数料は、買主の仲介をしたほかの不動産会社が受け取ります。これを、片手仲介といいます。

一方で、不動産会社がレインズに登録することなく自ら買主を探し、取引を成立させた場合は、買主からも仲介手数料が入ります。
つまり、不動産会社は買主を自分で見つければ、ビジネスとしては倍の売上になるわけです。仲介手数料を売主と買主から受け取るという意味で、両手仲介とも呼ばれます。

しかし売主の立場では、依頼した不動産会社が自ら買主を見つけたいと、レインズ登録を先に延ばすようなことがあれば、売却の機会を逃すリスクになります。
1社だけが持つ買主顧客数と、レインズに登録されている不動産会社が持つ買主顧客数では大きな差があるからです。

また、売主と買主では本来、利益は相反するものとされています。そのため、それを1社に任せることは大きなリスクを伴います。
不動産の仲介業務においてはレインズで情報を開示し、片手仲介での迅速な取引こそが、売主の利益にかなうものといえます。

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両手仲介と片手仲介のイメージ

レインズを利用した不動産売却の流れ

不動産会社がレインズを利用して不動産売却を行う場合の流れは、以下です。

  1. 依頼を受けた不動産会社と売主の間で不動産売却に向けて媒介契約が結ばれます。
  2. 不動産会社は物件の詳細を図面や写真とともに、レインズに「売り物件」として登録します。
  3. レインズに登録された物件は売り物件データとして、図面や写真とともに全国の不動産会社で検索されます。
    マッチング登録を行っている不動会社へは、プッシュ型通知が届きます(マッチング登録とは、不動産会社があらかじめ探している不動産の条件を入力しておくと、その条件にヒットする物件が登録された際に即座に通知がいくシステム)。
  4. レインズに登録された物件である旨の「登録証明書」が発行され、売主に交付されます。
  5. 不動産会社は売り物件を、売主の承諾を得て広告媒体に掲載します。
  6. レインズ検索で買い物件を探す不動産会社は、条件が合えば、売主側の不動産会社に購入希望の連絡をします。
  7. 売買契約に向けた交渉が始まります。
  8. 交渉がまとまれば売買契約を結び、物件を引き渡します。
  9. 最初に売り物件を登録した不動産会社は、売れた物件を成約物件として成約価格等を登録します。

レインズと広告の関係

レインズ掲載物件のなかには、広告不可とする条件の付いた物件も多数あります。
通常、不動産会社は、売主と媒介契約を結んだ不動産会社の承諾を得ることを前提に、レインズに登録されている物件をポータルサイト等の広告に掲載することで、買主を探します。

しかし、物件を売り出していることを周囲に知られたくないなど、売主側の事情で広告不可を前提にレインズに掲載されているものもあります。
つまり広告には掲載されることのない物件が、レインズにだけ登録されている場合もあるということです。

不動産売却にレインズをうまく利用しよう

レインズは、売り物件としての不動産の情報をスピーディーに全国に知らしめるためのシステムです。
売却を依頼した不動産会社と媒介契約を結んだら、まずは売り出し価格の参考にレインズ・マーケット・インフォメーションを検索してみてください。自分が売りたい不動産の類似物件や近傍物件の成約事例が掲載されているため、価格トレンドをつかむことができます。

また、自分が売却を依頼した物件が掲載されたかどうかの確認も必要です。レインズに登録が完了したことを証明する「登録証明書」は、不動産会社を通じて交付されます。物件データは正確か、間取り図面、写真などに間違いはないかをしっかり確認しましょう。

レインズに掲載されると、不動産会社の媒介業務の報告書で、問い合わせがあったかなどの反響を知ることもできます。
その結果をもとに不動産会社と相談し、売却に向けた活動を行っていきましょう。

レインズの登録物件数と利用実績

2022年度の新規登録物件数は423万5,628件

公益財団法人不動産流通推進センターでは、レインズに関係する各種統計や市場データの分析を行っており、その成果をWeb上で公開しています。

2022年度の新規登録物件数は423万5,628件で、前年に比べ10.2%の減少です。月に平均すると、35万2,969 件の物件が登録されています。

公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(2022年分)」

※公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(2022年分)」より抜粋

個人でも不動産相場を調べられるデータベース

個人でも不動産相場を調べられるデータベースとしては、前述したレインズ・マーケット・インフォーメーションのほかに、国土交通省の「土地総合情報システム」があります。

国土交通省「不動産情報ライブラリ」

「不動産情報ライブラリ」は、2006年4月から制度化された「不動産の取引価格情報提供制度」に基づき、国土交通省が運営している不動産の取引情報サイトです。

従来、中古の不動産物件は、相場価格が広く知れわたっているとは言い切れない状況にありました。相場が分かりにくい市場では、価格の妥当性が問われ、取引が活発に行われない状況が生まれます。

そのように不透明性が課題とされていた不動産市場の信頼性を高め、活性化させるために情報を公開しているサイトです。

▼国土交通省「不動産情報ライブラリ

まとめスーモ

  • 動産取引においては、市場の情報公開と透明性の確保が大きな課題であり、レインズはその一翼を担うシステムです
  • 不動産を売却するときは、物件をレインズ登録してもらうことで、効率よく買主を見つけられます
  • レインズに物件登録ができるのは不動産会社だけですが、一般の方々もレインズを通じて相場などの情報を得ることが可能です

イラスト/のりメッコ
構成・取材・文/コハマジュンイチ
構成・取材・文/サクラサクマーケティング株式会社

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